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2018年09月25日 (火) | 編集 |
今回読んだ本は奥田英朗さんの小説『無理』です。

舞台は北海道の『ゆめの市』。この市が実際に存在するのかどうか地理に疎い私には分かりませんが、よくある小さな町が合併して市になった地方都市です。モデルは実在するのもしれません。
合併し大きな自治体になったとはいえ所詮は地方の都市で寂れていて人も少ない田舎町。その町に住む5人の主人公と彼らを取り巻く人たちの生活の様子をありありと描いてある非常に人間描写が巧みな傑作でした。


1人目は市職員の「相原友則」。県庁からゆめの市に研修?として送り飛ばされ、県庁に戻れる日を夢見ながら毎日生活保護者のケースワーカーとして彼らの生活の監視と生活保護費の削減に奔走させられています。

2人目はこの市で生まれ育った女子高生の「久保史恵」。ゆめの市で生まれ育った彼女は地元の閑散さに失望しており、なんとしても東京に脱出することを目指しているのですが・・・。

3人目の登場人物は「加藤祐也」。地元の暴走族として散々悪さをしてきた祐也は、今は詐欺会社のセールスマンとして漏電遮断器を売る仕事をしています。

4人目の「堀部妙子」は48歳の独身者。孤独に耐えながらスーパーの万引き保安員をしつつ怪しい宗教を心の拠り所として生活しています。

最後、5人目は「山本順一」。亡くなった父親に大物議員をもつ彼は、父親の縁により今は市議会議員を努めていながらももっと大きな活躍を求めて県議会議員になるという野心を秘めています。


この寂れた地方都市で埋もれた日々を過ごしている5人が今の境遇から脱出すべく七難八苦しながら足掻きまわる姿を思いっきりリアルに陰鬱に描いています。


------------【続きはここから】--------------

奥田英朗さんの著書は人の心理描写を非常にリアルにありありと描いていて、私も今まで何冊も読んできましたがとても現実感があり大好きな作家さんの1人です。

しかし今回の著作『無理』は地方に住む人たちの半ば絶望という名の泥沼に胸半分まで浸かっているような、なんといったらいいのでしょう、脱出口がどこにも見つからないようなじわじわと締め付けられるような生活の有り様を書ききってあり、胸につかえてきて非常に読む進めるのが困難な一冊でした(笑)


奥田さんはかつて同じような世界観の小説で『最悪』という小説も書いています。これも寂れた生活を送っている複数の主人公たちが色んな所で交わって徐々に最悪な状況へと引きずり降ろされていく、なんとも救いようのない胸に来る小説でした。

『最悪』を読破した時もどこにでもいるようなぱっとしない普通の人たちのさもしい生活を描ききっていて読み応えを感じたものですが、しかし今回読んだ『無理』のほうがよっぽど最悪というタイトルに相応しい、悲劇とまでは言えないけれど恵まれてもいない、まさに泥沼に少しずつ沈んでいくような生活の悲惨さという面をより濃縮したような読むのが苦しくなる傑作です(笑)


こういうのを読むとこの方はつくづく現実の、それも目立たない日陰にいる人たちの生活を描くのが上手いなぁと感じてしまいます。
よくある痛快な小説にありがちなどこか自分の生活とかけ離れた遠くの世界の人が大それた冒険や大きな活躍をする作品でなく、私のご近所にもいるような名前も知らないような「普通の」人が抱える生活のうら寂しさのようなものを自分自身の出来事のように感じさせてくれます。読んでいる途中、この登場人物たちに起きている様々なトラブルがまるで人ごとのように思えなくて何度も手が止まってしまいました(笑)

そういうわけで読み終わった後スッキリしたり、まして感動するような内容の小説ではありません!(爆) 心にずっしりと残る重い感じの小説です。

しかし巧みな描写と読ませる文章力でとても臨場感を感じずにはいられない傑作ではあると断言できます。やや気分が悪くなったりする方も中にはいるかもしれませんが、リアリティあふれる庶民(ここの登場人物はまさに庶民といえよう!)の息苦しい生活がこれでもかと描かれています。そういう系統の作品が好きな方は一度読んでみてはどうでしょう。

なおこの小説の舞台が真冬の北海道なので冬に読むとなおのことはまれるかもしれません。逆に真夏の暑く眩しい日差しの中で読むのは個人的におすすめしませんね(笑)



    


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